ご存知の方も多いと思いますが、農業園芸用の肥料の一つ尿素肥料と、ごく少量の洗濯糊と中性洗剤を水に溶かし、モミの木に見立てた紙に溶液を浸み込ませ、数時間放置して結晶を成長させたクリスマスツリーです。
けっこう簡単に作れるので、私が担当している高学年の児童に毎年提供しており、毎年児童全員が成功しています。
2~5日間程結晶は成長し続けるので、やがて蔵王の樹氷、スノーモンスターの様に結晶のお化け状態になります。
ただ、作る度に結晶の出方や形が変わるので、尿素溶液に加える添加物の影響を調べてみました。
主材料は農業用の尿素肥料です。
添加するのはPVA洗濯糊と台所用液体中性洗剤です。
添加物混合比調査実験を開始します。
添加材料は少量ずつを計測する必要が有るので、右の絵の道具を使っています。
特に洗剤は微小量の添加を必要とするので、普通のスポイトとPPシリンジ(針径0.5mm)で定量し、スポイト1滴≒0.02mℓ、PPシリンジ1滴≒0.005mℓを確認しました。
量りは1mg単位で量れる電子量りです。
小さなプラスチックコップ(100mℓ)に糸を巻いた針金を芯材として立て、夫々に下の表の尿素溶液を20mℓ入れて結晶の成長を観察しています。
気象条件は、気温が室内温度で10~20℃程度、湿度は冬の乾燥した日です。
尿素溶液の大元液は尿素肥料300gに水250mℓを加え、40~50℃に熱して溶かしたものです。
これを80mℓずつの元液としてPVC糊を加え、20mℓずつに分けてコップに入れ、夫々に中性洗剤を滴下しています。
それらのコップには番号を付け、以下の解説に使っています。
番号は右の絵の様に左下から上に11から14番、1列右に下から21から24番と順に54番まで振っています。
そうして夫々のコップに下の表の様に中性洗剤と洗濯糊を添加します。
洗剤は元液
20mℓに
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元液80mℓ
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元液80mℓ
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元液80mℓ
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元液80mℓ
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元液80mℓ
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スポイト2滴
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14 | 24 | 34 | 44 | 54 |
スポイト1滴
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13 | 23 | 33 | 43 | 53 |
PPシリンジ2滴
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12 | 22 | 32 | 42 | 52 |
PPシリンジ1滴 0.005mℓ 0.025% |
11 | 21 | 31 | 41 | 51 |
注液して1時間程した時左側の列11~14のコップの溶液の中に結晶が成長してきました。
たぶん積もった雪のようにはならないでしょう。
他のコップには芯材やコップの内面に結晶が現われてきました。
2.5時間程で総てのコップに結晶が現われてきました。
41のコップが元気ないですね。
11~14のコップは溶液中にびっしりと結晶で埋まっています。
4時間を経過しました。
33、34、42~44が元気です。
10時間を経過しました。
出足の悪かった41が凄いことになってきました。
24時間経過(2日目)して41は更にすごい状態です。
結晶が出ないだろうと思っていた11~14が意外にも芯に結晶が出てきています。
更に開始から48時間後(3日目)には11~14の結晶が成長しています。
他のコップでも結晶成長は続いています。
4日目、11~14の結晶は更に成長を続けています。
21~24のコップは少し左にずらしています。
6日目、分かりにくいですがほんの僅かながら成長しています。
8日目、変化が見られなくなりました。
8日目の11,21,41の各コップです。
結果はご覧のとおりですが、地元の小学校と交流しているグアムの小学校の児童にもクリスマスツリーを作ってもらおうと思い、グアムの気象条件に似た高温多湿の日本の夏、気温25℃以上、湿度60%以上で実験したのですが、結果は惨憺たるものでした。
結晶発生に2時間以上、更に20時間以上経過したところでせっかく成長した結晶が空気中の湿気を吸ったのでしょう、台の上に落ちてしまいました。
残念な結果ですが、尿素の結晶を成長させるには気象条件を充分考慮する必要が有るようです。
このことから結晶の成長と形は、単に混合比だけではなく気象条件も重要な要素であると認識できました。